【イギリス】オークニー諸島の新石器時代遺跡【世界遺産】

Skara Brae, Neolithic settlement, Orkney, Scotland
Skara Brae, Neolithic settlement, Orkney, Scotland
By Renata at English Wikipedia - Created by Renata, Public Domain, Link

オークニー諸島の「新石器時代遺跡中心地」

イギリスの先史時代の遺跡というと、イングランド南西に残る新石器時代のストーンヘンジが有名です。しかし、スコットランドの北東の海に位置するオークニー諸島にも、同時代の多くの遺跡が残っていることは、日本ではあまり知られていないのかもしれません。

オークニー諸島のメインランド島に遺る住居跡、環状列石、墳墓などは、とても良い状態で保存されており、当時の人々が用いた道具や素材、精神面、社会構造をうかがい知るための貴重な手掛かりとなっています。西ヨーロッパで最も重要な新石器時代の遺跡のひとつとされており、世界遺産に登録されています。

これらの遺跡が建造された時代はおおよそ、古代エジプトでマスタバが造られ、古代メソポタミアでジッグラトが建造され始める頃でした。

オークニー諸島の遺跡の動画 by ORKNEY.COM

タイトル:Orkney – archaeology
公開者:ORKNEY.COM 2014/07/11 に公開 

オークニー諸島「世界遺産の4つの遺跡」+1

Heart of Neolithic Orkney (新石器時代遺跡中心地)と名付けられ、世界遺産に登録されたエリアはメインランド島にあります。このエリアで1999年までに4つの主な遺跡が発見されて世界遺産に登録されたのち、2002年にも新たに貴重な遺跡が発見されました。それぞれ、どんな遺跡なのか、この項で簡単に紹介します。

メイズハウ-Maeshowe

オークニーで最も大きな墓のひとつ
Maes Howe burial chamber
メイズハウ
By Brian Elliott, CC BY-SA 2.0, Link

メイズハウはオークニー諸島で見られる最も大きな墓のひとつです。ブリテン諸島やヨーロッパにおいて石器時代から青銅器時代にかけて見られる「パッセージグレイブ(≒羨道墳)」の一種とされています。 パッセージグレイブとは、細い入口通路と玄室があって(もちろん人骨が格納されていて)、それらに土を盛って丸い土塁状に仕上げたものを言います。

エジプトのピラミッドより古い

建造時期は紀元前3000-2800年頃と推定されています。これは、イングランド南西にあるストーンヘンジに巨石を建造するよりも前、またエジプトのピラミッドが建設され始めるよりも数世紀前にあたります。

冬至の夕日が一直線に差し込む玄室

土塁は直径35m、高さ7.3mで、南南西に入口があります。細くて狭い通路が約10メートルつづき、中央の小さな部屋につながっています。 石と木と骨しか道具のない時代ですが、20トンを超える石も使われています。 中央の部屋には、三方の壁それぞれに小窓でつながったスペースがあり、おそらくは人骨を安置するために使われていました。

驚くべきことに、緩やかに傾斜した通路には、冬至の夕日が一直線に差し込み、中央の部屋まで光が届くよう設計されています。

ノルウェー十字軍の落書き

この墓が使われなくなってから遥かに時が下った中世の1100年頃、ノルウェー十字軍がこの遺跡に立ち入り、部屋の中に「ルーン文字」の落書きを残しました。

3Dで描き出されるメイズハウの構造
Maeshowe Chambered Cairn, Orkney | 3D Scanning

Historic Environment Scotland がYoutubeで公開している動画です。ナレーションは英語ですが、メイズハウの構造が内部まで3Dで描き出されていて、とてもよくわかります。

ストーンズ・オブ・ステネス-Standing Stones of Stenness

ブリテン諸島で最も古いヘンジ
Stanes of Stenness, Orkney. Photograph by Bill McKelvie.
Stanes of Stenness, Orkney.
By User:Wmck, CC BY 2.5, Link

紀元前3000年頃に造られたと推定されており、一般にブリテン諸島で発見されているヘンジの中で最も古いものと言われています。ヘンジとは「環状の堀と堤」を指します。Wikipedia の Standing Stones of Stenness によれば、堀から出土した動物の骨は、炭素年代測定の結果、紀元前3100年頃のものと推定されたそうです。 (近年の調査で、イングランド南西に位置するストーンヘンジも、紀元前3000年頃に「ヘンジ」が造られたと推定されました。)

Stenness という名前は古いノルウェー語の「石岬」を意味する言葉に由来するそうです。

12本の石柱が環状に立っていた

環状に建てられた12本の石柱のうち、4本が現在も立った状態で遺っています。石の高さは5~6メートルにも及びますが、厚みは比較的薄く約30cmで、先端は斜めに切り落とされたような鋭い形状をしています。 数十世紀の間に一部が耕作地になったため、ヘンジの原型は留められていないものの、発掘調査から本来は石柱の外周に大きな堀と堤が築かれていたことがわかりました。 ウォッチストーンと呼ばれる高さ5.6mの石は円外の北西にあり、そこにはかつて少なくとも2つの石があったそうです。

Visit Orkney によれば、毎週水曜日の10時から無料のガイドツアーがあるそうです(2017年12月現在)。

リング・オブ・ブロッガー-Ring of Brodgar

60基の巨石が並んでいたヘンジ
Standing Stones at the Ring of Brodgar Impressive sandstone slabs, some 10-12 feet tall, within a circular ditch.
リング・オブ・ブロッガー
By Colin Smith, CC BY-SA 2.0, Link

こちらは、イングランド南西にあるストーンヘンジとエイブリーに次いで、ブリテン諸島で3番目に大きなヘンジです。直径104mの真円のヘンジで、当初は60基の巨石が環状に立ち並んでいたと推定されています。しかし20世紀末の時点では27基が残るのみでした。

堀は深さ3m、幅9m、円周380mです。地面は硬い岩盤ですから、当時の人々が掘るには相当の労力を要したと考えられます。

今後の発掘調査が待たれる遺跡

何のために造られたものか未だ判明していないものの、すぐ近くにストーンズ・オブ・ステネスとメイズハウの墳墓が存在することから、重要な遺跡と位置付けられ、世界遺産「新石器時代遺跡中心地」を構成する遺跡のひとつとなりました。おそらくは天文観測用、あるいは祭祀場だろうと考えられています。

Wikipedia の Ring of Brodgar によれば、円の内側に石が配置されておらず、類似するヘンジの中では特殊な構造だそうです。 しかし、円の内側はまだ考古学者によって発掘されていないため、例えば木柱などの痕跡が見つかる可能性も考えられるとのことです。

建造時期は紀元前2500~2000年頃と推定されています。これは新石器時代の末期から青銅器時代の始めに当たり、周囲で発見された他の遺跡よりもやや新しいものということになります。

スカラ・ブレイ-Skara Brae

ゴミ捨て場の地下に築かれた石造りの住居
スカラ・ブレイ
スカラ・ブレイ
By Wknight94Own work, CC BY-SA 3.0, Link

スカラ・ブレイは、オークニー諸島で最も有名な遺跡です。紀元前3200年頃に建造された石造りの住居が、とても良い状態で今日まで遺っており、当時の生活をうかがい知ることができます。

住居は、より以前から存在していた貝塚(ゴミ捨て場/塵山)の下に築かれました。

Wikipediaのスカラ・ブレイのページには次のように書かれています。 塵山の層は住居の安定性という点では難があったが、そこに築かれた最大の目的は、何層にも重なる塵山が断熱材の役割を果たして、オークニーの厳しい冬を凌ぐことができる点にあった。

住居には、石を組んで作った棚や寝床、暖炉や家具があり、原始的な水洗トイレまであります。遺跡は一般公開されていて、ガイドツアーで見学できます。

スカラ・ブレイの発見と発掘

1850年、スカラ・ブレイと呼ばれていた丘の草と土が大嵐によって削り取られたことが発見につながりました。20世紀に発掘を行い、完全な姿が露出しました。

この住居群は、紀元前3200年頃から500~600年間使われ、紀元前2500年頃に放棄されました。その理由は判っておらず、砂嵐が村を覆ったとする説もあれば、もっと緩やかな経緯があったとする説もあります。

ネス・オブ・ブロッガー-Ness of Brodgar

新石器時代の宗教施設が出土
Ness of Brodgar excavations 2017 August
Ness of Brodgar excavations 2017 August
By VictuallersOwn work, CC BY 4.0, Link

1999年に「新石器時代遺跡中心地」として世界遺産に登録されたのは上述の4つの遺跡です。

ここで紹介するネス・オブ・ブロッガーは、2002年に新たに発見された先史時代の遺跡で、上述のリング・オブ・ブロッガーとストーンズ・オブ・ステネスの間に位置しています。装飾された石板や、厚さ6メートルの石造りの壁、そして新石器時代の宗教施設と思われるものが出土しました。 2017年-2018年現在も発掘が続けられています。

最も古い構造物は紀元前3,300年頃に建てられたと推定され、またここが使われなくなったのは、紀元前2,200年頃と推定されています。

新石器時代には今日のような湖はなく、この辺りは湿地帯であったと考えられています。Wikipedia – Ness of Brodgar には、「スカラ・ブレイの人々はおそらく、ここまで歩いてきて何らかの儀式を行い、その日のうちに帰ることができた。」と書かれています。

発掘の様子や最新の考古学情報、見学できる期間などは、Ness of Brodgar Trust Website で確認することができます。

Trench T, Ness of Brodgar 2016

ネス・オブ・ブロッガー遺跡を3Dモデルで、自由な角度から見ることができます。

Ness of Brodgar Trust Website – The Ness on TV

Ness of Brodgar Trust 公式サイトで、ネス・オブ・ブロッガーを採り上げたテレビ番組のいくつかを視聴できます。

地図

なごやん

なごやん

歴史と旅行と猫が好き。

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