18世紀~19世紀初頭の建築家&造園家 – パッラディーオ様式と自然な美しい景観

18世紀~19世紀初頭の建築家&造園家 – パッラディーオ様式と自然な美しい景観

18世紀~19世紀初頭、上流階級の富める人びとは豪華なカントリーハウスを所有し、そこに住んだり、季節ごとに滞在したりしました。所有する豪邸とまわり景観を美しく仕上げることに時間とお金を費やし、邸宅までのアプローチと窓からの眺めをより印象的なものにしようと躍起になりました。

1835年のブレナム宮殿の敷地
Blenheim Palace Park and gardens in 1835

パッラディーオ様式とイングランドの庭園

18世紀の初頭に建てられたカントリーハウスはたいていパッラディーオ様式でした。パッラディーオ様式とは、古代ギリシャ・ローマ時代の神殿建築を基調とした、左右対称の構造を特徴とする建築様式です。

第4代オーフォード伯(1717 – 1797 Horace Walpole)は、イングランドの庭園の美しさを「自由をあらわす自然なスタイル」と表現し、フランスの庭園を「権威主義的な政治体制を表す幾何学的なスタイル」と表現したそうです。

第4代オーフォード伯ホレス・ウォルポール
Horace Walpole, 4th Earl of Orford

有名な建築家&造園家

William Kent
ウィリアム・ケント(c. 1685 – 1748)

ウィリアム・ケント(William Kent)は、パッラディーオ様式をイングランドに再導入したひとです。自然なスタイルの庭園も生み出しました。代表建築はチズウィックハウス(Chiswick House)、ストウハウス(Stowe House)、ルーシャムハウス(Rousham House)です。

前庭から見たチズウィックハウス
Chiswick House view from forecourt

Robert Adam
ロバートアダム(1728 – 1792)

ロバートアダム(Robert Adam)は、イニゴ・ジョンズ(1573 – 1652 Inigo Jones)のパッラディーオ様式は否定しながらも、新古典主義の流れは踏襲し、これをより自由に発展させました。ローマとロンドンで建築をまなび、アダムスタイル(Adam style)とよばれる様式を生み出しました。

ケドレストンホール:ロバートアダムによって設計された南正面
Kedleston Hall. The south front by Robert Adam, based on the Arch of Constantine in Rome

「高慢と偏見」に登場するレディ・キャサリン・デ・バーグの邸宅、そして「マンスフィールドパーク」の豪邸は、いずれとも"モダン"と述べられており、 ロバート・アダム風の建築だろうと想像できます。

It is possible to imagine that Rosings Park, Lady Catherine de Bourgh’s house, and Mansfield Park, both of which Jane Austen describes as modern, belong to the style of houses constructed by Robert Adam.
Georgian society in Jane Austen’s novels

ロバート・アダムの建築一覧はここで見れます:

List of architectural works

The Works in Architecture of Robert and James Adam

Capability Brown
キャパビリティ・ブラウン(1715 – 1783)

ランスロット・ブラウン(Lancelot Brown)はキャパビリティ・ブラウン(“Capability” Brown)として知られています。キャパビリティとは、素質・将来性・可能性の意味で、彼の口ぐせ「あなたの敷地にはもっと良くなれる”キャパビリティ”がある」に由来しています。

キャパビリティ・ブラウンは、170を超える庭園をデザインし、その多くが今でものこっています。彼の影響があまりに大きかったため、先人のチャールズブリッジマン(1690–1738 Charles Bridgeman)やウィリアム・ケント(1685 – 1748 William Kent)が見落とされがちになるとさえ言われています。

ブレナム宮殿の敷地を流れる小川の一部をせき止めて池をつくった
At Blenheim Brown dammed the paltry stream flowing under Vanbrugh’s Grand Bridge, drowning half the structure with improved results

キャパビリティ・ブラウンがのこした庭園のリストはここで見れます:

Gardens and parks

Humphry Repton
ハンフリー・レプトン(1752 – 1818)

ハンフリー・レプトン(Humphry Repton)は、18世紀最後の著名な造園家とされ、キャパビリティ・ブラウンの後継ともいわれます。邸宅とそれを取り巻く庭園の境目を、さらに自然に仕上げました。フランス風の人工的なスタイルに逆らう方向性をいっそう極めたといった感じです。また複雑かつ折衷的な19世紀のスタイルの先駆けともいわれています。

ウェントワースの敷地の改造案
Site at Wentworth, South Yorkshire after proposed landscaping

リー家が所有するアドルストロップパーク(Adlestrop)の広大なエリアをモデルチェンジしたのはハンフリー・レプトンです。邸宅の庭と、隣接する牧師館の庭の境目をなくし、美しい景観をつくるために小川をうねらせました。邸宅と牧師館のどちらからの眺めも同じく美しいものとなるよう仕上げられました。なお、リー家は摂政時代の作家ジェーン・オースティンの親戚でもあります。

It is Repton who at Adlestrop in Gloucestershire, where Jane Austen’s cousins the Leighs live, remodels the vast grounds of Adlestrop House to combine them with the garden of the adjoining vicarage, and diverts a watercourse to compose a lovely landscape which can be admired equally well from the manor house and from the vicarage.
Georgian society in Jane Austen’s novels

※アドルストロップの広大なエリア… 1759–62年にサンダーソンミラー(Sanderson Miller)によってゴシックリバイバル様式でデザインされた建物や庭園。この庭園をハンフリー・レプトンが再デザインした。邸宅と庭はグレードIIにリストされている。

ジェーン・オースティンが少なくとも3度は訪れたとされるアドルストロップハウスは母方の親戚リー家が所有。
Jane Austen visited Adelstrop House, formerly the rectory, at least three times between 1794 and 1806 when the occupant was Rev. Thomas Leigh, cousin of Jane Austen’s mother.

参考
Georgian society in Jane Austen’s novels
Adlestrop House
Robert Adam William Kent 
“Capability” Brown Humphry Repton

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