マナーハウスは、カントリーハウス?
快適な住宅として利用されたならマナーハウスもカントリーハウス
「カントリーハウス」と混合されやすい言葉に「マナーハウス」があります。マナーハウスは、中世の封建領主の館です。時代が時代ですから 要塞化 されたマナーハウスもありました。
こうしたマナーハウスも、平和がおとずれた後世に、増改築して快適な住宅として利用されたなら「カントリーハウス」の一種となります。でも要塞として機能し続けたり、あるいは要塞のまま捨て置かれて荒廃した場合は「カントリーハウス」とは呼べないのです。
元修道院だった建物が邸宅として利用されると、カントリーハウスと呼ばれます。これと同じ感じかな、と思います。
さて、では「カントリーハウス」とはつまり何なのでしょうか。
カントリーハウスとは
都会のタウンハウスに対して、田舎のカントリーハウス
「カントリーハウス」という言葉は、ロンドンなどの都市部に建つ「タウンハウス」に対比する言葉として使われ始めました。裕福な貴族やジェントリ(大地主)は、所有する広大な土地にお屋敷をもち、ロンドンなどの都市部にも邸宅をもっていました。季節ごとに滞在場所を変えて暮らしていたのです。

Apsley House in 1829 by TH Shepherd. The main gateway to Hyde Park can be glimpsed on the left.

This late 18th-century oil painting by William Marlow emphasises the romantic aspect of Chatsworth’s setting on the edge of the Peak District
都市部にタウンハウスを構えるほど経済的に恵まれていないジェントリ層もいました。彼らにとっては所有する土地に建つ屋敷が唯一の住まいでしたので、カントリー(田舎)かタウン(都会)かを呼び分ける必要はありませんでした。しかし成り行き上、広大な領地の所有者が暮らすお屋敷はカントリーハウスと呼ばれるようになりました。
「カントリーハウス(country house)」という総称には、国王が所有する壮大な宮殿から、地方のつましいジェントリが暮らす小さな邸宅まで、幅広い建物が含まれます。ですが明確な基準はなく、じつはあいまいな呼称です。共通している点として…
- 田舎に建っていること
- 要塞ではないこと
- 1500年頃より後に豪邸 / 邸宅として利用されたこと
などが挙げられています。
名称から探るカントリーハウスの生い立ち
建築当初は何に使われていた建物?
カントリーハウスにはそれぞれ生い立ちがあり、その生い立ちが名称に関わっているケースも多いです。
日本のように地震がなく、何百年も使える石造りの建物は、その利用目的が時代とともに変わることが珍しくありません。 建築当初は何に使われていた建物なのか、名称から察することができます。必ずというわけではありませんが、おおむね次のような感じと言えます。
- キャッスル(castle)…元 要塞
- パレス(palace)… 宮殿
- コート(court)… 宮廷
- アビー(abbey)…元 大修道院
- プライオリ (priory)…元 小修道院
- ホール(hall)…中世のホールハウスから発展
- マンション(mansion)…カントリーハウスたるべくして新築された邸宅
- パーク(park)…敷地?
- ハウス(house)…建物?
- マナー(manor)…元 封建時代の「領主の館」
- プレイス(place)…?
ただし、建物の名称にルールはありません。後世に建てられたカントリーハウスに、由来と関係のない名前が与えられることもあります。その場合は歴史とは無関係です。
カントリーハウスの規模と様式
規模は、壮大なブレナム宮殿から小さなエバーストーンホールまで
規模については、田舎に建つ壮大な宮殿から小さなお屋敷まで、すべて「カントリーハウス」と総称できます。壮大なブレナム宮殿(Blenheim palace)も、小さなエバーストーンホール(Ebberston Hall)も、カントリーハウスです。
そこでカントリーハウスを便宜的に分類するなら、建築の目的や状況によって次の3つに分けることができるかもしれません。
- パワーハウス…宮殿など
- マイナーカントリーハウス…貴族やジェントリのお屋敷
- ビクトリアンハウス…19世紀にビジネスで富を築いた人たちが新改築したお屋敷
くわしくは次のリンク先にまとめました。

様式は、時代を反映
カントリーハウスの建築様式は様々です。中世のものから、テューダー朝エリザベス時代の様式、あるいは後のゴシック様式やバロック様式、摂政時代に新築されたパッラディーオ様式、そこから少し時代を下ったビクトリアン様式などがあります。
長い歴史をもつカントリーハウスのなかには、ファサードやウィングに時代ごとの建築様式が混在しているものがあります。
詳しくは次のリンク先にまとめました。


18世紀~19世紀初頭の建築家と造園家
富める人びとは、所有する豪邸とまわり景観を美しく仕上げることに時間とお金を費やし、邸宅までのアプローチと窓からの眺めをより印象的なものにしようと躍起になりました。18世紀~19世紀初頭のカントリーハウスや、それをとりまく敷地のレイアウトやデザインを手がけた著名な建築家と造園家は…
- ウィリアム・ケント(c. 1685 – 1748)
- ロバートアダム(1728 – 1792)
- キャパビリティ・ブラウン(1715 – 1783)
- ハンフリー・レプトン(1752 – 1818)
です。くわしくは下記のリンク先にまとめました。

王室以外の大豪邸カントリーハウス
ロイヤルファミリーの大邸宅にも匹敵する規模のカントリーハウスを4つ紹介しています。
- ブレナム宮殿
- ノールハウス
- キャッスルハワード
- チャッツワースハウス
詳しくは下記のリンク先にまとめました。
