このページは、中世(前期)のヨーロッパの服装【女性編】です。
中世ヨーロッパの服装の「概要」および「男性編」は下記リンク先を参照してください。
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中世前期の「女性」の服装
西ヨーロッパにおける女性の服装は中世前期を通じて変化しました。ローマ帝国外部から侵入したゲルマン系民族はローマ後期の文化をいくらか踏襲し、これは衣服においても同じでした。
チュニックとペプロス
肩にピン留めして固定するチューブ状の衣服
ヨーロッパ大陸の北部における中世初期の女性の衣服は、1枚以上の長そでのチュニックと、ペプロス( peplos )とも呼ばれるチューブ状の衣服で構成されていました。チューブ状の衣服はピンで肩に留めて着用します。やや遅れてイングランドでも、この装いが主流になりました。裕福な人々は衣服に金属のアップリケをつけたり、刺繍や織物ベルトで飾ったりしました。
YouTube Dressing as an Early Anglo Saxon Woman
抜粋文:This class is about the clothing worn by early English women (aka Anglo-Saxons) between 450 and 700 A.D. on the island of Great Britain.
コートを羽織るスタイル
上流階級は高価なブローチや織物ベルトで装飾
500年以降、女性の衣服はチュニックの重ね着になります。フランク人が定着した地域およびその影響を強く受けた地域※では、女性はインナーとして長いチュニックを着用し、アウターには長いコートを着用しました。
アウターのコートはブローチを用いて前面の中央で留めたり、ベルトを着用することもあったようです。このスタイルは、フランスのメロヴィング朝の女王の墓の発掘によって有名になりましたが、当時のすべての女性が同じであったというわけではありません。とくにブローチは、多くの女性にとって高価すぎたでしょう。
※フランク人の影響を強く受けた地域… アレマンニ、バイウヴァリー、西ケント(Alemanni、Bavarii、Kent) など。
キーホール状のネックライン
授乳にも便利?
アングロサクソン時代後期のイングランド(東ケントを除く)でも、チュニックの重ね着が主流になりました。刺繍や織物ベルトで洋服を飾ったと考えられています。この時代のチュニックは、キーホールネックライン( keyhole neckline )とよばれる襟をもち、このスタイルによって授乳がしやすくなったかもしれません。この胸元は普段はブローチなどで留めて閉じられました。これに加えて貴族の女性は、大きなポンチョ風の衣類を身に着けていたと考えられています。
エプロンドレス
北欧(バイキング)の女性を特徴づける装い
中世前期のスカンジナビア地方の洋服を特徴づけるものとして最も有名なのは「エプロンドレス( Apron Dress、trägerrock、hängerock、smokkr)」と呼ばれる衣服です。おそらくは鉄器時代のゲルマン民族の装いから進化したものだろうと考えられています。チューブ状で、身体にフィットするものもあれば緩いものもあったようです。肩ひもと亀形ブローチ( turtle brooches )で留めて固定しました。
すべての北欧女性がこのスタイルだったわけではありません。違った服装で埋葬されていた例もあります。帽子や頭を覆う衣類も出土しています。総じて、どの装いがどれほど普及していたかは定かではありません。
その他
ボトムスや、ヘッドドレス、布地について
上流階級の女性は、ボトムスや靴下を着用したかもしれません。ローマから踏襲されたと思われるベールやその他のヘッドドレスを着用した絵図も見つかっていますが、北部ヨーロッパではさほど普及していなかったようです。
ヘッドドレスの着用は、キリスト教化したゲルマン民族の、とくに既婚女性に多く見られるようになります。
毛皮も着用していたと考えられますが、女性の衣服にどのように使われていたかは定かではないようです。
ヨーロッパ全域において、衣服の布地の主流はウールかリネンでした。麻の例もみられるようです。シルクは上流階級だけが入手できました。
参考文献
- Early medieval European dress
- last edited on 1 January 2023, at 12:47 (UTC)