カントリーハウスと聞いてイメージするのは、田舎に建つお屋敷かと思います。
じつは大規模な宮殿をも含めて「カントリーハウス」と総称されるのですが、ここでは比較的ちいさな、”イメージ通り”のカントリーハウスについて書きます。ジェントリ(地主階級)や貴族によってしばしば入れ替わりで所有されてきたお屋敷です。
長い歴史をもつカントリーハウスのなかには、ファサードやウィングに時代ごとの建築様式が混在しているものがあります。 時の有名建築家を雇える人は限られていましたので、おおくのカントリーハウスは、おもに地元の建築家によって改築されました。そのテイストは実用的で、時代の流行にも左右されました。
統一感に欠ける増改築は、その当時にはしばしば非難されるものでした。 今となっては、そのクオリティこそが、イングランドのカントリーハウスの興味深いところとも言えそうです。
Canons Ashby
キャノンズアシュビー
郷士ジョン・ドライデン(John Dryden)の一家が住んでいたキャノンズアシュビー(Canons Ashby)は、混在建築の一例として挙げられます。
中世に農場の家だった建物が、テューダ朝時代に、中庭を中心に拡張されました。ステュアート朝時代に立派な天井しっくいが施され、18世紀にはジョージアン式のファサードが加えられました。
時代ごとに地元の建築家が請け負ったとおもわれる増改築は、全体的にミスマッチな様式でありながら、その継ぎ目がわからないように一体化されているのが興味深いポイントです。
…と解説されていたのですが、中央の白い壁が気になります…^^;
Brympton d’Evercy
ブリンプトンデバーシー
サマセットにあるブリンプトンデバーシー(Brympton d’Evercy)も様式が混在しているカントリーハウスです。こちらは一貫して地元の建材(ハムストーン)を使っているため、統一感があります。
Rousham House
ルーシャムハウス
ルーシャムハウス(Rousham House)は、建築家ウィリアム・ケント(William Kent)によって再設計されました。 主人の12人の子供たちのために、急きょスペースが必要となったためでした。
Wilton House
ウィルトンハウス
ウィルトンハウス(Wilton House)はイングランドで最大規模のハウスのひとつに数えられます。こちらも複数の時代にわたる建築様式がみごとな調子で整えられています。
所有者はペンブローク伯爵家(Earls of Pembroke)でした。 上述のルーシャムハウスとは違い、時代ごとに国内最高の建築家が採用されています。 はじめにホルベイン、そしてインディゴ・ジョンズ(Inigo Jones)、それからウィリアム・チェンバー(William Chambers)、これにジェームズ・ワイアット(James Wyatt)がつづきました。