19世紀イギリスの上流階級の序列について書きます。
貴族もジェントリも上流階級
- 上流層(Upper class)
- 中産層(Middle class)
- 下層(Lower class)
という社会全体の階層において、貴族階級と地主(ジェントリ)階級は上流層に該当します。上流層の階級は上から
- 国王&王族(king)
- 貴族階級(Peerage)
- 地主階級(Gentry)
と並びます。
貴族には爵位があり、ジェントリには爵位がない
貴族と地主階級の違いはなにか?それは、貴族には爵位があるいっぽうで、地主階級には爵位がないことです。これが両者の決定的な違いです。
爵位は家系の長男が継ぐので、次男以下の子孫は必然的に爵位なし、つまり地主階級となります。その子孫たちもやはり地主階級です。相続できる土地や資産が少なくなるほど、年収も少なくなります。
貴族は紋章をもっています。しかし地主階級のなかにも紋章を持つ権利を得ている家系がありました。ですから、紋章の有無で貴族とジェントリを見分けることはできません。
地主階級でも近い親戚が貴族という場合があります。そんな場合は地主階級といえど、大陸でいうところの「貴族」にほぼ等しいものとみなされていました。

上からのジェントリ、下からのジェントリ
以上はいわば、上層から降りてきた地主階級です。じつは「血統」は、イングランドの地主階級を決める必須要素ではありません。下層から昇ってきた地主階級もいたからです。イングランドの地主階級は、革命前のフランスの身分制度などと比べると流動的だったのです。
たとえばヨーマン(自由農民)身分から身を起こして地主階級に仲間入りしていた家系もあります(Sir Edward Phelips /16世紀)。また19世紀のはじめ頃から、ビジネスで成功した富裕層が多数、地主階級に仲間入りしました。
小説『高慢と偏見』でわかる地主階級
ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』に登場するミスター・ダーシーは、母方から貴族の血をひいています。いっぽうミスター・ビングリーは、家系をさかのぼると商家だったようです。いずれとも「地主階級」に属し、そして友人同士です。
地主階級は作家本人が属した階級なので、小説から当時の流行や暮らしぶりを窺えるとともに、ところどころに現実的で辛辣な文言が含まれていて面白いです。


Nobility / Peers / Gentry の違いは?
Peers は貴族で、Gentry は大地主。どちらもも上流階級のメンバだけど、貴族には爵位があるいっぽうで、大地主には爵位がありません。これが Peers と Gentry の決定的な違いですが、問題は、ところどころで目にする nobility という言葉。誰が含まれるの?
イギリスの現代英語では、nobility はほぼ peers と同義語だそうです。でも一般的には、爵位のあるなしが問われる言葉ではないらしいのです。
じゃあどう見分ければよいのかというと、 Gentry and nobilityによれば
(英国において)
Gentry and nobility
爵位付きの nobility は、貴族階級(peers)。
爵位なしの nobility はおおむね、地主階級(Gently)。
ということらしいです。
結局は、文脈から察してください…ってことかなと思いました…^^;
参考
Landed gentry
Gentry | Georgian society in Jane Austen’s novels