このページは、カントリーハウス【イースト オブ イングランド 編】です。
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抜粋文:そもそも「カントリーハウス」という言葉は、ロンドンなどの都市部に建つ「タウンハウス」に対比する言葉として使われ始めたそうです。裕福な貴族やジェントリは、所有する.....
ブリックリング・ホール
Blickling Hall
ブリックリング・ホールは、 1940年にナショナルトラスト( National Trust )に託され、現在は一般公開されています。冬季は休館です。
このお屋敷の建築は1616年に始まり、廃墟となっていたテューダー朝時代の建物の基礎の上に築かれました。ジャコビアン様式( Jacobean )※のカントリーハウスです。発注主はヘンリー・ホバート准男爵( Sir Henry Hobart )といい、建築家はロバート・リンミンジ( Robert Lyminge )でした。
※ジャコビアン様式…ルネサンス建築の一種
なおテューダー朝時代に、この敷地を所有していたのは、かのブーリン家です。ヘンリー8世の2番目の妃となったアン・ブーリン( Anne )はこの地で生まれたと考えられています。
ブリックリング・ホールの見どころのひとつは、図書室です。歴史的に重要な写本や本のコレクションが所蔵されています。おもに第3代准男爵リチャード・エリス( Sir Richard Ellys )の収集によるものです。
18世紀にハハァと呼ばれる地形デザインが施されました。イギリス式庭園によく見られる地形デザインで、庭園からの景色を遮ることなく、庭園外からの家畜の侵入を防ぎます。庭園とその周辺を連続した景観に見せることができるのが特徴です。
「ブラウンの応接室」の内装は1930年代のものです。
基本情報とお役立ちリンク
種類 | マイナーカントリーハウス Minor country houses |
スタイル | ルネッサンス建築、ジャコビアン様式 Renaissance ( Jacobean ) |
建築開始 | 1616年 |
所有者 | ナショナルトラスト National Trust |
所在地 | Blickling, Norwich NR11 6NF |
ウェブサイト | https://www.nationaltrust.org.uk/visit/norfolk/blickling-estate |
1616 | テューダー朝時代の廃墟の上にマンションが築かれる Sir Henry Hobart | Robert Lyminge. |
1746 | 第5代准男爵ジョン・ホバート(初代バッキンガムシャー伯爵)の代に、ハハァ※とドーリア式建造物が築かれ、隣接する土地の購入によって敷地が拡大 Sir John Hobart, the 5th Baronet | ha-ha |
1765- 1785 | 第2代バッキンガムシャー伯ジョン・ホバートがホールを改築 2nd Earl of Buckinghamshire |
19 世紀 | ホバート家が途絶えたため第8代ロージアン侯爵ウィリアム・カーが物件を相続し、西のファサードを改築 William Kerr, the 8th Marquess of Lothian |
1940 | ナショナルトラストに託される |
17世紀にはすでに廃墟となっていたテューダー時代の屋敷ですが、その屋敷はヘンリー8世の2番目の妃アンの生家だとされています。テューダー朝時代にこの場所で生まれたとされる姉妹はともに国王ヘンリー8世の愛人となり、アンは妃にまで上り詰めます。しかし最終的に処刑される運命にありました。
男児の世継ぎを欲していたとされるヘンリー8世は、アンと結婚するために、正妃メアリとの離婚を成立させる必要がありました。この過程でイングランドはカトリック教会を離脱し、イングランド国教会を設立しています。このとき多くの修道院が接収されて、カントリーハウスとして転用される機会にもなりました。
そんな時代の王室騒動は小説でも楽しめます。「ブーリン家の姉妹」はベストセラーとなって映画化もされました。
映画は、Amazon Prime や Netflix でも楽しめます。
外部リンク Blickling Hall
抜粋文:Blickling Hall is a Jacobean stately home situated in 5,000 acres of parkland in a loop of the River Bure, near the village of Blickling north of Aylsham in Norfolk, England.
外部リンク NT Blickling Hall (ブルックリング ホール)
抜粋文:秋が一段と深まり、町の木々も色づきはじめました。もうすでに葉を落とし始めている木もあります。そこで、もっとたくさんの木を見るために、ノーリッチから北に車で20分くらいのところにある、Blickling Hallに行って来ました。
ハットフィールド・ハウス
Hatfield House
ハットフィールド・ハウスは、イングランドのハートフォードシャー( Hertfordshire )にあるお屋敷です。2023年現在、第7代ソールズベリー侯爵ロバート・ガスコイン・セシル( Robert Gascoyne-Cecil )が所有しており、一般に公開されています。
現在見られるカントリーハウスは、1611年に着工されたジャコビアン様式の建物です。ジェームス1世( King James I )の大臣であった初代ソールズベリー伯爵ロバート・セシル( Robert Cecil )の屋敷として築かれました。
ハットフィールド・ハウスが建っている場所には、かつてハットフィールド王宮が建っていました。いまでは、お屋敷から少し離れた場所にその一部が遺るのみですが、この王宮はエリザベス1世( Queen Elizabeth I )が幼少期を過ごした場所として知られています。
そのためハットフィールド・ハウス にはエリザベス1世にまつわる品々がたくさんあり、旅行客を惹きつけています。マーブルホールには、エリザベス1世の「虹の肖像( Rainbow Portrait )」が飾られています。
エリザベス1世を継いだジェームス1世は、この王宮がお気に召さなかったようです。1607年に、大臣ロバート・セシルにこの王宮を譲渡しました。セシルはこの場所を気に入り、カントリーハウスを建てる際に、王宮の一部を解体して建材を再利用しています。
17世紀のガーデンは、庭園デザイナーのジョン・トラデスカント( John Tradescant the elder )によるものです。イングランドでは見ることのできなかった植物をヨーロッパ大陸から持ち帰って、この庭園に用いました。18世紀に荒廃しますが、ヴィクトリア朝時代にふたたび手入れされ、現在にいたります。
基本情報とお役立ちリンク
種類 | マイナーカントリーハウス Minor country houses |
スタイル | ルネッサンス建築(ジャコビアン様式) Renaissance ( Jacobean ) |
建築開始 | 1611 |
所有者 | ソールズベリー侯爵 Robert Gascoyne-Cecil |
所在地 | Great North Rd., Hatfield AL9 5HX |
ウェブサイト | https://www.hatfield-house.co.uk/ |
1611 | ジェームス1世の大臣ロバート・セシルのカントリーハウスとして築かれる Robert Cecil, 1st Earl of Salisbury |
第二次 大戦 | 戦時中に捕虜となっていた英国軍人の療養施設として利用され、1945年には国王ジョージ6世と妃が同施設を訪問 Civil Resettlement Unit |
ハットフィールド・ハウスは映画やドラマやTV番組の撮影にも使われています。
映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」では、スコットランド女王メアリが処刑前に幽閉された「チャートリー ホール」を表現するために、ハットフィールド・ハウスの北のエントランスホールおよび武器展示室が使われました。ただし一部の見た目が撮影用に作り替えられているので、見逃しやすいかもしれません。なお、本物の 「チャートリー ホール」 はスタッフォードシャー( Staffordshire )にあり、1781年の火災で焼失しています。
外部リンク Hatfield House
抜粋文:The present Jacobean house, a leading example of the prodigy house, was built in 1611 by Robert Cecil, 1st Earl of Salisbury and Chief Minister to King James I.
外部リンク 電車1本で行ける!まるで映画の世界!英国貴族の館ハットフィールド・ハウス
抜粋文:ロンドン市内から電車で最短20分で着ける貴族の館、ハットフィールド・ハウスは一般公開されており、ため息の出るような豪華さで、英国貴族の優雅な生活を垣間見ることができますよ。ここは数多くの映画やドラマのロケ地ともなっています。
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ホウカム・ホール
Holkham Hall
ホウカム・ホールは、ノーフォーク( Norfolk )に建つ18世紀のカントリーハウスです。初代※レスター伯トーマス・コーク( Thomas Coke )のために、パッラーディオ様式( Neo-Palladian )で建てられました。携わった建築家はウィリアム・ケント( William Kent )と、第3代バーリントン伯爵リチャード・ボイル( Lord Burlington )※です。
※初代レスター伯…5回目の創設。ホウカム・ホールを継いだ息子は第7回目の創設の初代レスター伯( Earl of Leicester )。
※バーリントン伯リチャード・ボイル…政治に関してはあまり興味を示さず、「芸術のアポロン」 (Apollo of the Arts)、「建築家伯爵」 (architect Earl) と呼ばれた。 イギリスとアイルランドにパラディオ様式建築を持ち込んだことで有名であり、彼の主要な作品に、バーリントン・ハウス、ウェストミンスター・スクール、チジック・ハウス、ノースウィック・パーク 等がある。
ホウカム・ホールは、イングランドに遺る パッラーディオ 様式建築の最高の例のひとつです。数多く存在する パッラーディオ 様式の建物のなかでも、とくに厳しく設計され、 パッラーディオ 様式の理想に限りなく近いものとなっています。
今もレスター伯家が所有していますが、2023年現在、日曜 / 月曜 / 木曜 に一般公開されています。
ホウカム・ホールの建築を依頼したトーマス・コークは、1720年の南海泡沫事件※で大損失を被った被害者のひとりです。この痛手によってコークが計画していたカントリーハウスの建築は着工が10年以上も遅れました。コークは1759年に亡くなり、ホウカム・ホールの完成を見ることはありませんでした。
※南海泡沫事件…18世紀におきたバブル崩壊。実態とは異なる宣伝文句や政治家の抱き込みで異様に株価が上昇していた南海会社と、その手法を真似るペーパーカンパニーがともに株価を上げ続けていたところ、ペーパーカンパニーが法で裁かれ、その余波で南海会社の株も大暴落。イギリスの経済におおきな打撃を与えた事件。
関連記事 「南海泡沫事件」18世紀に起きたバブル崩壊
抜粋文:18世紀は「合資(≒株式)会社」が注目を集めるようになる時代です。投資家は公開市場で株を買い、リスクを負って利益の分け前を得ることができます。エリザベス1世のこ.....
ホウカム・ホールの建築には莫大な費用がかかり、かつバブル崩壊の経済的損失によって、トーマス・コークの後継者には経済的な余裕が一切ありませんでした。そのためホウカム・ホールは、1764年に完成以来、増改築されることなく、当時の佇まいを今日まで保っており、遺産的価値の高いカントリーハウスのひとつとなっています。
基本情報とお役立ちリンク
種類 | パワーハウス Power houses |
スタイル | 新古典主義 Neoclassical ( Palladian ) |
建築開始 | 1734年 |
所有者 | レスター伯爵家 Earl of Leicester |
所在地 | Holkham Rd, Wells-next-the-Sea NR23 1AB |
ウェブサイト | https://www.holkham.co.uk/ |
1734 | ホウカム・ホールの着工 |
1764 | ホウカム・ホールの完成 |
外部リンク Holkham Hall
抜粋文:Holkham Hall is one of England's finest examples of the Palladian revival style of architecture, and the severity of its design is closer to Palladio's ideals than many of the other numerous Palladian style houses of the period.
外部リンク 473 ホウカム・ホール|美術館訪問記
抜粋文:このホールの持ち主は10km幅の海岸から10km奥まで、つまり100平方キロメートル、3000万坪を全部所有しているというのです。英国でただ一人ビーチの私有を許されているのだとか。
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参考文献
- English Country House Explained (Britain’s Living History)
- Countryside Books; New版 (2012/6/11)
- Blickling Hall
- last edited on 2 February 2023, at 16:55 (UTC)
- Hatfield House
- last edited on 17 January 2023, at 12:25 (UTC)
- Holkham Hall
- last edited on 5 December 2022, at 12:01 (UTC)