リージェンシー・ファッション(摂政時代の装い)

リージェンシー・ファッション(摂政時代の装い)

18世紀末~19世紀初頭

The First Quadrille at Almack’s

フランス貴族をイメージさせる装いを避ける

18世紀末から19世紀初頭のヨーロッパおよび関連する国々のファッションは、18世紀初頭の重厚なコスチュームから解放されて、かろやかな装いが流行しました。というのもフランス革命のあおりで、フランス貴族のようないでたちで出歩くことを好む人がいなくなったからです。また、かつての衣装は社会的地位に左右されるものでしたが、19世紀を迎えるころの装いは、新しい社会的アイデンティティを示すものとなり、自己について考える機会もあたえました。

イギリスでは(広義の)摂政時代 / リージェンシーにあたります。統治不能におちいったジョージ3世に代わって王太子ジョージが摂政をつとめた時代です。作家ジェーン・オースティンが生きた時代で、作品もこの時代が舞台です。

個々の内面に光が当たりはじめる時代

ファッションの大きな変化は、18世紀の終わりころには哲学や社会的理想にも影響をおよぼしました。この時代より以前は、アンシャン・レジームと呼ばれる旧秩序が「自己概念(自分がどんな人間であるか考える)」を妨げていました。1780年代以降は、新しい”自然な”スタイルによって個々の内面にも光が当たるようになりました。1790年代には「内面と外面を合わせもつ自己」という新しい概念がうまれます。

女性の衣装

England, London, June 1, 1814 Prints; engravings Hand-colored engraving on paper Gift of Dr. and Mrs. Gerald Labiner (M.86.266.179) Costume and Textiles

重厚な装いから軽やかな装いへ

スカートにジャケットを羽織る日常の装いは実用的で動きやすく、労働者階級の女性を彷彿とさせます。きつく締めあげられたコルセットを装着しての重厚な装いは姿を消し、ハイウエストで体形にそった自然なドレスが流行しました。この古典的(ギリシャ風)なスタイルは、ドレスに包まれている身体のかたちが強調されるものでした。

手軽さと快適さと清潔さ

この新しい”自然な”スタイルは、衣装の手軽さと快適さもあわせもっていました。頻繁に着替えること洗うことを容易にし、衛生的であることが重要視され、軽くて動きやすくなりました。上流階級の女性さえも、裾を長く引きずる幅広のドレスをあらため、丈を縮めたドレスを着るようになります。代わりに繊細で凝った縁取りが、上流階級を示す強力なイメージとなりました。細やかな装飾は、それだけ労働力が集約されたものだからです。

女性のファッションは、男性のファッションの影響も受けました。ウエストコート(チョッキ / ベスト)やジャケットなどは、女性の”動きやすさ”を際立たせました。衣装が実用的になるこの新しいながれは、階級や性別によってのみカテゴライズされてきた衣装の在り方を少し変えることになりました。

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男性の衣装

Costume Parisien fashion plate No.978 from 1809.

カットの変化、トラウザーの登場と真っ白なリネンの流行

男性の装いにも変化がありました。18世紀には華やかな刺繍がほどこされていたコートも、無地になりカットも変わりました。ファッションリーダーのボー・ブルメル(Beau Brummell)がトラウザー (trousers)を導入し、完璧な仕立て(tailoring)と簡素で真っ白なリネンを男性のファッションに用いました。

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ファッションマガジンの刊行

ファッションマガジンやジャーナルが発刊されるようになったのも、この時代です。たいていは月刊で、女性も男性も、刻々と変化する流行を追うようになりました。

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近隣諸国

ドイツやアメリカはフランスやイギリスに習い、スペインは伝統を守る

ドイツ地方でも伝統的な衣装から、フランスやイギリスに習った装いにかわりました。アメリカは、フランスを模倣しつつも、透け感をおさえるために肌着をつけショールを羽織りました。しかしスペインでは、貴族だけでなく平民もフランスの啓蒙主義やファッションに抵抗し、マハス / マホス(majos)と呼ばれる伝統的な装いに身をつつみました。

参考
1795–1820 in Western fashion
The Time Traveller’s Guide to Regency Britain
Georgette Heyer’s Regency World