ジョージ3世はジョージ2世の孫にあたります。父フレデリックが祖父より先に亡くなっていたため、祖父ジョージ2世が亡くなると王位を継承しました。ジョージ3世は、アン女王以来の、イギリス生まれの国王です。
ジョージ3世の治世は、優雅な文化が花開いた時代であると同時に、国際的な軍事紛争に特徴づけられる時代でもありました。
作家ジェーン・オースティンやシェリー、詩人バイロン、ジョン・キーツ、ウィリアム・ワーズワースなどが作品を残しました。またピットやフォックスなど偉大な政治家が現れた時代であり、ウェリントン公爵やネルソン提督の軍事的活躍でも知られる時代です※。
※Jane Austen、Mary Shelley、Lord Byron、John Keats、Wordsworth、Duke of Wellington、Horatio Nelson
国際情勢としては、七年戦争、アメリカ独立戦争、フランス革命戦争、ナポレオン戦争が相次ぎました。
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ジョージ3世(George William Frederick)
年表
1760 | ジョージ3世が王位を継承 |
1762 | 第3代ビュート伯ジョン・ステュアートが首相になる: 不人気であったためボディガードが必要になった( Earl of Bute ) |
1763 | パリ条約:七年戦争の終結( Peace of Paris、Seven Years’ War ) |
1765 | 1765年印紙法:植民地アメリカで増税( Stamp Act ) |
1766 | ウィリアム・大ピットが首相になる:( William Pitt the Elder ) |
1768 | アークライトがる水力紡績機を発明:( Richard Arkwright ) |
1769 | ジェームス・クックの最初の冒険:太平洋を探検( Captain James Cook’s first voyage ) |
1770 | 第2代ギルフォード伯爵フレデリック・ノースが首相になる:( Frederick North, Lord North ) |
ジェームス・クックがオーストラリア上陸:( Botany Bay ) | |
1771 | ブリタニカ大百科事典の発行:( Encyclopaedia Britannica ) |
1772 | ジョン・ハリソンがH4時計を発明:経度の測定が可能になり、航海技術が向上( John Harrisons ) |
ウォーレン・ヘースティングズがインド総督に任命される:( Warren Hastings ) | |
1773 | セヴァーン川に世界初の鉄橋がかけられる:( The iron bridge ) |
ボストン茶会事件:英国政府の課税に対する、アメリカ植民地人の抵抗( Boston Tea Party ) | |
1775 | アメリカ独立戦争はじまる:レキシントンの戦いを皮切りに勃発( American Revolutionary War ) |
1775 | ジェームス・ワットがスチームエンジンを発明:( James Watt ) |
1776 | 7月4日アメリカ独立宣言発布:大陸会議が独立を宣言( Continental Congress、United States Declaration of Independence ) |
1780 | ゴードン暴動:カトリック緩和政策に対する反カトリックによる暴動( Gordon riots ) |
1781 | ヨークタウンの戦い:フランスの援助を得たアメリカ植民地軍に、イギリス軍が敗退( Battle of Yorktown ) |
1782 | アイルランド議会:アイルランドの独立性を高めるものだったが、短命に終わる( Constitution of 1782 ) |
1783 | 9月3日パリ条約:アメリカ独立戦争の終結( Treaty of Paris ) |
ウィリアム・小ピッドが首相になる:~1801( William Pitt the Younger ) | |
作詞家ラビー・バーンズが最初の詩を発行:( Robert Burns ) | |
1788 | ジョージ3世ポルフィリン症を1回目の発症:( Signs of illness ) |
オーストラリアに植民地ニューサウスウェールズを建設:( Colony of New South Wales ) | |
1789 | フランス革命ぼっ発:( French Revolution ) |
『Life of Johnson』と『Rights of Man』が出版:( James Boswell、 Thomas Paine ) | |
1793 | フランス国王ルイ16世の処刑:( King Louis XVI of France ) |
英仏戦争:~1802( French Revolutionary Wars ) | |
1798 | ナイルの海戦:ネルソン少将がフランス艦隊を撃破( Battle of the Nile ) |
『Lyrical Ballads』が出版:( William Wordsworth ) | |
所得税の導入:( Income Tax ) | |
1800 | アイルランドの併合:( Act of Union ) |
1803 | ナポレオン戦争はじまる:( Napoleonic Wars ) |
1805 | トラファルガーの海戦:ネルソン提督がフランス・スペイン艦隊に勝利と同時に落命( Battle of Trafalgar ) |
アウステルリッツの戦い:ナポレオンがロシアに勝利( Battle of Austerlitz ) | |
1807 | 奴隷貿易法:ウィリアム・ウィルバーフォースが奴隷貿易廃止運動を成功させる( Slave Trade Act、William Wilberforce ) |
1808 | イベリア半島戦争:~1814年。スペインからフランス軍を駆逐( Peninsular War ) |
1809 | コルーニャの戦い:イギリス陸軍がフランス軍に勝利( Battle of Corunna ) |
1810 | ジョージ3世、最後の疾患:1811年から息子ジョージが摂政をつとめる |
1812 | 首相スペンサー・パーシヴァルが殺害される:( Spencer Perceval ) |
米英戦争:イギリス植民地カナダとアメリカの戦争( War of 1812 ) | |
1813 | 『Pride and Prejudice』の出版:( Jane Austen ) |
東インド会社の独占権が終了:( Charter Act of 1813 ) | |
1814 | ローアンとトゥールーズでナポレオンが敗北:退位するがエルバ島からもどる( Campaign in north-east France ) |
1815 | ウォータールーの戦い:ナポレオンの敗北とナポレオン戦争の終結( Battle of Waterloo ) |
穀物法:安価な輸入品からイギリスの農業を守る目的で設けられた法律( Corn Laws ) | |
1818 | シャーロット王妃が亡くなる:( Queen Charlotte ) |
『 Frankenstein 』の出版:( Mary Shelley ) | |
1819 | ピータールーの虐殺:政治に変革を求める市民が虐殺された事件( Peterloo Massacre ) |
1820 | ジョージ3世が崩御 |
おもなできごと
軍事紛争に特徴づけられる治世
59年を超えるジョージ3世の治世は、これまでのどの国王をも上回る長さになりました。
ジョージ3世の治世は、イギリスがヨーロッパ諸国や遠くアフリカ、アメリカ、アジアでの軍事紛争に関わったことに特徴づけられます。
七年戦争
治世の初期は、7年戦争( Seven Years’ War )です。この戦争を経て、イギリスはヨーロッパおよび北アメリカ、そしてインドで、覇権を握りました。
七年戦争
七年戦争は、イギリス、フランス、スペイン、プロシア、オーストリアなどを筆頭に欧州の国々の間でおこった国際紛争です。
ヨーロッパ大陸における戦争の主な原因は、先の「オーストリア継承戦争( 1756–1763 / War of the Austrian Succession )」に付随する未解決の領土問題です。オーストリアはプロシアに奪われたシレジア( Silesia )の返還を求めました(第3次シレジア戦争)。プロシアはドイツにおけるいっそうの領土と覇権の拡大に余念がありませんでした。
プロシアはイギリスと結び、オーストリアはフランスおよびロシアと結びました。
イギリス、フランス、スペインはヨーロッパ大陸のみならず、新世界の植民地でも争いを繰り広げました。北アメリカや西インド諸島(カリブ海域)の植民地争いでイギリスは、フランスおよびスペインと戦いました(英仏植民地戦争)。
結果はイギリスおよびプロシアの勝利です。いくつかの条約※がむすばれ、プロシアの覇権と地位が向上し、イギリスは植民地帝国として繁栄を迎えました。
※条約…Treaty of Saint Petersburg (1762) Treaty of Hamburg (1762) Treaty of Paris (1763) Treaty of Hubertusburg (1763)
ただし、この戦争によって王政各国の財政はひっ迫します。これが影響し、まもなくイギリスでは「アメリカ独立戦争」が起き、フランスでは「フランス革命」が起こります。
アメリカ革命 / アメリカ独立戦争
七年戦争に勝利したイギリスは植民地帝国として繁栄しましたが、財政はひっ迫しました。植民地への課税を強化することで収入を確保しようとするイギリス政府でしたが、さまざまの法案を「植民地人の代表がいない議会」で決定したため、植民地人の反感を買います。
イギリスの植民地アメリカではまもなく、イギリス政府に対する反乱が起こり、これが革命・独立戦争( American War of Independence )へと発展しました。
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YouTube 【世界史】 アメリカ独立革命1 13植民地の苦悩 (17分)
フランス革命戦争とナポレオン戦争
フランスでは「フランス革命」がぼっ発しました。フランス国王を処刑した革命軍およびナポレオンとの戦いが、合わせて1793年~1815年まで続きました。1815年の「ウォータールーの戦い( Battle of Waterloo )」でナポレオンは敗退します。
ウォータールー / ワーテルローの戦い
「ウォータールーの戦い」は、1815年6月18日(日)に、ベルギー※で行われた戦いです。ナポレオン率いるフランス軍が、2つの第七次対仏同盟軍に破れました。
※ベルギー…当時は現オランダを含む「ネーデルラント連合王国( United Kingdom of the Netherlands )」
2つの第七次対仏同盟軍のひとつは、イギリスのウェリントン公爵( Duke of Wellington )が率いた同盟軍です。イギリス軍、オランダ軍、ハノーヴァー軍、ブランズウィック軍、ナッサウ軍で構成されていました。ウェリントン軍とも呼ばれます。
もういっぽうは、より大きなプロシア軍で、これを率いたのはフォン・ブリューヒャー陸軍元帥( von Blücher )です。ブリューヒャー軍とも呼ばれます。
この戦いによって、1803年からつづいた一連のナポレオン戦争に終止符が打たれました。
奴隷制度の廃止
1807年に「奴隷貿易」を禁止する法案が議会を通過しました。
奴隷貿易廃止法案
イギリス議会による1807年の奴隷貿易廃止法案は、イギリス帝国における奴隷貿易を廃止する法案です。奴隷を使役する慣習そのものの廃止には至らなかったものの、世界の奴隷廃止に先駆けた法案のひとつです。
奴隷の廃止は以前から叫ばれており、古くは1772年に、イギリス本土の奴隷の扱いを改める法案( Somerset’s case )※が通過していました。以来、奴隷に関する法案が何度か改められますが、イギリス帝国の各地域にまでおよんで奴隷制度が廃止されるのは、少し先の1833年( Slavery Abolition Act )です。
原因不明の精神疾患
ジョージ3世は50歳頃から精神疾患を繰り返すようになり、最後の10年は回復することがありませんでした。双極性障害または血液疾患ポルフィリン症と云われていますが、実際のところは不明のままです。
最後の10年は、長男である王太子ジョージ(のちの4世 / George IV)が摂政をつとめました( Regency era )。
地図
世界初の鉄橋
参考文献
- A Brief History of British Kings & Queens
- Robinson; UK ed.版 (2014/3/27)
- Kings and Queens of England & Britain
- by Ben Johnson | Historic UK Ltd. Company
- George III
- Wikipedia | edited on 1 August 2022, at 04:51 (UTC)
- George III king of Great Britain
- By John Steven Watson | Updated: May 31, 2022
- King George III (1760 – 1820)
- Britroyals | British Royal Family History